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コンピューター将棋ソフト「tanuki-」シリーズの実験結果を掲載しています。

tanuki- 2023-08-17 tanuki- 学習部データ生成部 対局前の history のクリア

tanuki- 2023-08-17 tanuki- 学習部データ生成部 対局前の history のクリア

実験内容

  • tanuki- 学習データ生成部で、対局前に history をクリアし、学習データを生成し、学習させ、レーティングを測定する。

棋譜生成

生成ルーチン tanuki-棋譜生成ルーチン
評価関数 tanuki-wcsc28 FV_SCALE=16
1手あたりの思考 深さ最大 9 思考ノード数最大 50,000 ノード
開始局面 foodgate の 2020 年~ 2021 年の棋譜のうち、レーティング 3900 以上同士の対局の 32 手目までから 1 局面ランダムに選択し、その局面を開始局面とした ランダムムーブなし
生成局面数 10 億局面
生成条件 対局は打ち切らず詰みの局面まで学習データに出力した 自己対局の開始時に置換表をクリアした 自己対局の開始時に history をクリアした

機械学習

機械学習ルーチン やねうら王機械学習ルーチン
学習モデル halfkp_256x2-32-32
学習手法 SGD ミニバッチ法
USI_Hash 1024
Threads 16
loop 1000
batchsize 1000000
lambda 0.5
eta eta1=1e-8 eta2=0.01 eta1_epoch=100
newbob_decay 0.5
nn_batch_size 1000
eval_save_interval 100000000
loss_output_interval 1000000
mirror_percentage 50
eval_limit 32000
weight_by_progress 無効
次元下げ K・P・相対KP
学習データ内で重複した局面の除外 バージョンのデフォルトに依存する
初期ネットワークパラメーター tanuki-wcsc28
勝敗項の教師信号 0.999

レーティング測定

対局相手 https://docs.google.com/document/d/1m0yCZ2wCdmbt4SE_OAXjBkCPkSlKjEgyIfrF1rbgtg8/edit tnk-wcsc28-2018-05-05.clear=yes
思考時間 持ち時間 300 秒 + 1 手 2 秒加算
対局数 5000
同時対局数 64
ハッシュサイズ 768
開始局面 たややん互換局面集

実験結果

棋譜生成速度

置換表をクリアしない場合 (tnk-wcsc28-2018-05-05.clear=yes)

989533801 / 1000000000

elapsed time = 68:00:00

current date time = 2023-07-28 17:47:16

finish date time = 2023-07-28 18:30:21

speed = 4047.35 (data/sec)

max speed = 4047.51 (data/sec)

置換表をクリアした場合 (tnk-wcsc28-2018-05-05.clear=yes.history_clear=yes)

985526259 / 1000000000

elapsed time = 68:00:00

current date time = 2023-08-16 03:23:41

finish date time = 2023-08-16 04:23:33

speed = 4029.26 (data/sec)

max speed = 4029.94 (data/sec)

機械学習

レーティング測定

対局数=5000 同時対局数=64 ハッシュサイズ=768 開始手数=0 最大手数=320 開始局面ファイル=C:\Jenkins\workspace\TanukiColiseum.2023-04-16\TanukiColiseum\taya36_2020-11-06.sfen NUMAノード数=1 表示更新間隔(ms)=3600000

思考エンジン1 name=YaneuraOu NNUE 7.63 64ZEN2 TOURNAMENT author=by yaneurao exeファイル=C:\Jenkins\workspace\TanukiColiseum.2023-04-16\engine1\source\YaneuraOu-by-gcc.exe 評価関数フォルダパス=D:\hnoda\shogi\eval\tnk-wcsc28-2018-05-05.clear=yes.history_clear=yes\final 定跡手数=256 定跡ファイル名=no_book 思考ノード数=0 思考ノード数に加える乱数(%)=0 思考ノード数の乱数を1手毎に変化させる=False 持ち時間(ms)=300000 秒読み時間(ms)=0 加算時間(ms)=2000 乱数付き思考時間(ms)=0 スレッド数=1 BookEvalDiff=30 定跡の採択率を考慮する=true 定跡の手数を無視する=false SlowMover=100 DrawValue=-2 BookEvalBlackLimit=0 BookEvalWhiteLimit=-140 FVScale1=16 Depth1=0

思考エンジン2 name=YaneuraOu NNUE 7.63 64ZEN2 TOURNAMENT author=by yaneurao exeファイル=C:\Jenkins\workspace\TanukiColiseum.2023-04-16\engine2\source\YaneuraOu-by-gcc.exe 評価関数フォルダパス=D:\hnoda\shogi\eval\tnk-wcsc28-2018-05-05.clear=yes\final 定跡手数=256 定跡ファイル名=no_book 思考ノード数=0 思考ノード数に加える乱数(%)=0 思考ノード数の乱数を1手毎に変化させる=False 持ち時間(ms)=300000 秒読み時間(ms)=0 加算時間(ms)=2000 乱数付き思考時間(ms)=0 スレッド数=1 BookEvalDiff=30 定跡の採択率を考慮する=true 定跡の手数を無視する=false SlowMover=100 DrawValue=-2 BookEvalBlackLimit=0 BookEvalWhiteLimit=-140 FVScale2=16 Depth2=0

対局数5000 先手勝ち2504(56.3%) 後手勝ち1945(43.7%) 引き分け551

engine1

勝ち2151(48.3% R-10.2 +-9.6) 先手勝ち1208(27.2%) 後手勝ち943(21.2%)

宣言勝ち137 先手宣言勝ち65 後手宣言勝ち72 先手引き分け289 後手引き分け262

engine2

勝ち2298(51.7%) 先手勝ち1296(29.1%) 後手勝ち1002(22.5%)

宣言勝ち116 先手宣言勝ち62 後手宣言勝ち54 先手引き分け262 後手引き分け289

2151,551,2298

学習ロスは、 history をクリアしないものとクリアしたものとで、同程度だった。

検証ロスは、 history をクリアしたほうが下がった。

学習率は、 history をクリアしたほうが早く下がった。また収束も早かった。

平手局面の評価値は、 history をクリアしないものが 40 程度なのに対し、 history をクリアしたものは 50 程度だった。

評価値の絶対値は、どちらも 1 度上がったあと下がり、最終的には 1.13×10^9~1.14×10^9 付近に収束した。

レーティングは、 history をクリアしたほうが R-10.2 程度低く、有意な差があった。

考察

学習ロスと検証ロスについては、 history をクリアしたほうが、評価関数を、より学習データに近づけられることを表していると考える。

学習率については、 history をクリアしたほうが、より早い段階で学習データの内容を学習できていることを表している。これは、 history をクリアしたことで、同一の棋譜が多くなり、学習データの多様性が小さくなったことが理由である可能性がある。

平手局面の評価値については、学習において大きな問題が起こらなかったことを表していると考える。

評価値のスケールについては、今回生成した 2 つの学習データの教師信号の平均値が、ほぼ同じであったことを表していると考える。

レーティングについては、仮に history をクリアしたことで、同一の棋譜が多くなり、学習データの多様性が小さくなったことが理由である場合、学習データに登場する局面に過学習している可能性がある。

まとめ

tanuki- 学習データ生成部で、対局前に history をクリアし、学習データを生成し、学習させ、レーティングを測定した。

結果、 history をクリアしたほうが R-10.2 程度低く、有意な差があった。

次回は、学習データ生成時の自己対局の開始局面の戦型の割合を調整したものとしないものを用意し、それぞれ学習データを生成し、ランダムパラメーターから評価関数を学習させ、レーティングを測定したい。