nodchipのコンピューター将棋ブログ

コンピューター将棋ソフト「tanuki-」シリーズの実験結果を掲載しています。

tanuki- 2022-08-01 教師局面生成時の開始局面 (s-book_black) (2)

tanuki- 2022-08-01 教師局面生成時の開始局面 (s-book_black) (2)

実験内容

  • 教師局面の生成時、開始局面として s-book_black に収録されている局面を使用し、学習した評価関数のレーティングを計測する。

棋譜生成

生成ルーチン tanuki-棋譜生成ルーチン
評価関数 水匠 5 FV_SCALE=16
1手あたりの思考 深さ最大 9 思考ノード数最大 50,000 ノード
開始局面 s-book_black
開始局面後のランダムムーブ なし
生成局面数 10 億局面 × 4 セット
生成条件 対局は打ち切らず詰みの局面まで教師局面に出力した

棋譜シャッフル

シャッフルルーチン tanuki-棋譜シャッフルルーチン
qsearch なし

機械学習

機械学習ルーチン やねうら王機械学習ルーチン
学習モデル halfkp_256x2-32-32
学習手法 SGD ミニバッチ法
USI_Hash 1024
Threads 127
loop 100
batchsize 1000000
lambda 0.5
eta eta1=1e-8 eta2=0.1 eta1_epoch=100
newbob_decay 0.5
nn_batch_size 1000
eval_save_interval 100000000
loss_output_interval 1000000
mirror_percentage 50
eval_limit 32000
weight_by_progress 無効
次元下げ K・P・相対KP
教師局面内で重複した局面の除外 しない
初期ネットワークパラメーター tanuki-wcsc29
勝敗項の教師信号 1.0
やねうら王バージョン V5.33 相当

レーティング測定

対局相手 https://docs.google.com/document/d/1Lup-hHFH2_QWqEfe56obJ6OEwj15P-C0VO6pWV9-vgo/edit?usp=sharing やねうら王 V5.33 で作成した評価関数
思考時間 持ち時間 300 秒 + 1 手 2 秒加算
対局数 5000
同時対局数 64
ハッシュサイズ 768
開始局面 たややん互換局面集

実験結果

機械学習

v5.33 … https://docs.google.com/document/d/1Lup-hHFH2_QWqEfe56obJ6OEwj15P-C0VO6pWV9-vgo/edit?usp=sharing

suisho.s-book_black … 今回作成した教師局面で学習した場合

レーティング測定

対局数=5000 同時対局数=64 ハッシュサイズ=768 開始手数=24 最大手数=320 開始局面ファイル=C:\Jenkins\workspace\TanukiColiseum.2022-05-02\TanukiColiseum\taya36_2020-11-06.sfen NUMAノード数=2 表示更新間隔(ms)=3600000

思考エンジン1 name=YaneuraOu NNUE 7.10 64ZEN2 TOURNAMENT author=by yaneurao exeファイル=C:\Jenkins\workspace\TanukiColiseum.2022-05-02\engine1\source\YaneuraOu-by-gcc.exe 評価関数フォルダパス=D:\hnoda\shogi\eval\suisho5.s-book_black\final 定跡手数=256 定跡ファイル名=no_book 思考ノード数=0 思考ノード数に加える乱数(%)=0 思考ノード数の乱数を1手毎に変化させる=False 持ち時間(ms)=300000 秒読み時間(ms)=0 加算時間(ms)=2000 乱数付き思考時間(ms)=0 スレッド数=1 BookEvalDiff=30 定跡の採択率を考慮する=false 定跡の手数を無視する=false SlowMover=100 DrawValue=-2 BookEvalBlackLimit=0 BookEvalWhiteLimit=-140 FVScale1=16

思考エンジン2 name=YaneuraOu NNUE 7.10 64ZEN2 TOURNAMENT author=by yaneurao exeファイル=C:\Jenkins\workspace\TanukiColiseum.2022-05-02\engine2\source\YaneuraOu-by-gcc.exe 評価関数フォルダパス=D:\hnoda\shogi\eval\regression.v5.33\final 定跡手数=256 定跡ファイル名=no_book 思考ノード数=0 思考ノード数に加える乱数(%)=0 思考ノード数の乱数を1手毎に変化させる=False 持ち時間(ms)=300000 秒読み時間(ms)=0 加算時間(ms)=2000 乱数付き思考時間(ms)=0 スレッド数=1 BookEvalDiff=30 定跡の採択率を考慮する=false 定跡の手数を無視する=false SlowMover=100 DrawValue=-2 BookEvalBlackLimit=0 BookEvalWhiteLimit=-140 FVScale2=20

対局数5000 先手勝ち2421(53.9%) 後手勝ち2074(46.1%) 引き分け505

engine1

勝ち1904(42.4% R-48.0 +-9.7) 先手勝ち1045(23.2%) 後手勝ち859(19.1%)

宣言勝ち119 先手宣言勝ち67 後手宣言勝ち52 先手引き分け240 後手引き分け265

engine2

勝ち2591(57.6%) 先手勝ち1376(30.6%) 後手勝ち1215(27.0%)

宣言勝ち118 先手宣言勝ち57 後手宣言勝ち61 先手引き分け265 後手引き分け240

1904,505,2591

学習ロスと検証ロスは、元の評価関数に比べて小さかった。

平手局面の評価値は、元の評価関数に比べて大きかった。

評価値の絶対値は、元の評価関数と比べて大きかった。

レーティングは、ベースラインとした評価関数と比べて、 R-48.0 程度低かった。

考察

学習ロスと検証ロス

学習には、ロスの定義に交差エントロピーを使用している。交差エントロピーは、 p(x) または q(x) の値が、 0.0 または 1.0 に近いほど、小さくなる。これを考えると、教師局面に、評価値の絶対値の大きい局面が多く含まれていると考えるのが妥当だと思われる。

平手局面の評価値

教師局面の生成の際、 s-book_black の各局面から、登録されている指し手を指した局面を、開始局面とした。 s-book_black は、先手必勝を前提として作られた定跡であり、各指し手は、先手の勝率が高くなることを意図して登録されている。それらの指し手から指し継いで教師局面を生成したため、平手局面の評価値が高くなったのだと思われる。

評価値の絶対値

教師局面に、評価値の絶対値の大きい局面が多く含まれるようになったためだと思われる。これは、学習ロスと検証ロスの考察と、矛盾はない。

レーティング

s-book_black に収録されている局面に、過学習してしまっている可能性である。これにより、たややん互換局面集を用いた対局で、レーティングが下がってしまった可能性がある。

まとめ

教師局面の生成時、開始局面として s-book_black に収録されている局面を使用し、学習した評価関数のレーティングを計測した。結果、ベースラインとした評価関数と比べて、 R-48.0 程度低かった。

次回は、過去に生成した教師局面と、今回生成した教師局面を混ぜ、学習させ、レーティングを測定してみたい。